2020.08.17
「暑い日が続きますね」
あっという間にお盆が終わってしまいました。今年は熱中症とコロナに気を付けながら特別な夏をなんとか乗り切りましょう。今回は以前に少しお話ししたアトピー性皮膚炎の新薬「コレクチム軟膏」についてお話しさせていただきます。「コレクチム軟膏」は、ヤヌスキナーゼ(JAK)という分子をターゲットにした日本で開発された世界初のアトピー性皮膚炎治療用外用薬です。アトピー性皮膚炎の発症部位に塗ることで、細胞内のJAKを選択的に阻害しJAK/STAT経路という免疫・炎症の体の反応を抑える働きがあります。少し難しくなってしまいましたが、つまり、ステロイド外用剤よりも副作用が少なく治療できるアトピー性皮膚炎の外用剤が新しく使えるようになったという大変良いニュースなのです。アトピー性皮膚炎の治療については以前お話しさせていただいた3つの大きな柱「1.保湿によるスキンケアをしっかり行うこと」、「2.皮膚炎や痒みをしっかり抑えること」、「3.食物やダニ・ハウスダスト・カビ・花粉などの悪化要因を原因検索して除去すること」が大切ですが、このうち「コレクチム軟膏」は「2.皮膚炎や痒みをしっかり抑えること」に効果のある薬剤です。これまで皮膚炎を抑えるための治療はステロイド外用剤や免疫抑制外用剤が主体でしたが、それに「コレクチム軟膏」の選択が加わりました。最大の特徴は、副作用が少なく、刺激感や長期使用などの心配がほとんどないということです。実際、当院でもすでに多くの患者様に使用していただいていますが、ほとんど副作用がなく安全に使えています。さらにもう一つの特徴は、予防的に使用できるということです。アトピー性皮膚炎の患者様の最大の悩みである顔の病変が徐々に改善し、アトピーっぽくない明るい顔になってきます。もちろん良いことばかりでなく、薬としての効果は弱いため、体には効果が不十分であったり、顔に対してもひどくなった時にはステロイド外用剤を併用したり、子供にはまだ適応がなかったりと問題点もあります。しかし、少し前から使えるようになった「デュピクセント」同様に副作用が少なく安全性の高い治療薬の選択肢が増えたことはすごく良いことで、特に顔の病変がストレスだった患者様にたいへん喜んでいただけるので、医師としてこれほど嬉しいことはありません。塗り方など工夫しなければいけない点もあるため、使用する際には詳しくお話しさせていただきますが、アトピー性皮膚炎の治療では継続が大切ですので、頑張って続けられるように納得いくまでしっかり説明を聞いていただければと思います。今月は長くなってしまいましたのでここまでにさせていただきます。気になる皮膚症状やアレルギー症状の際には遠慮なくご相談ください。